(全5回シリーズ「看護部から病院を変える」)
前回(第2回)では、「稼働病床を増やす」ことで、
“動く病棟”をつくり、収益構造を取り戻す第一歩をお伝えしました。
今回は、その次のステップである
「人件費の適正化」=“整う組織”をつくるです。
■ なぜ「人件費の最適化」が進まないのか
10対1への機能転換が進む中で、多くの病院で見られるのが次のような現象です。
「10対1に変わったが、人はそのまま」
「看護師は足りているが、減らす判断ができない」
「現場が忙しいため、結局採用を止められない」
この状態が続くと、人件費が固定化し、収益に見合わないコスト構造が生まれます。
つまり、制度的には10対1でも、実態は7対1のコストを抱えたままの病院が少なくありません。
本来、機能転換の目的は“収益構造の適正化”であるはずが、結果として構造的な高コスト体質を残してしまうのです。
■ 「減らす」ではなく「整える」発想へ
人件費の最適化とは、「削減」ではなく「整流化」です。
私たちは、現場の業務量と人員配置のバランスをデータで可視化し、「必要な人員構造」を科学的に設計します。
この際に重要なのが、以下の3つの視点です。
1.業務量の可視化
・1人あたりの業務時間(直接ケア・間接ケア・記録・会議など)を定量化
・残業・休憩・離職などの実態を把握し、業務負荷の偏りを分析
2.人員配置の適正化
・病棟ごとの機能(急性期・回復期など)に合わせた必要人員数を算出
・患者構成と必要度に基づく科学的配置モデルを構築
3.人の動かし方の最適化
・業務の分担・委譲・ローテーションを見直し、
「減らす」ではなく「動きを整える」ことで生産性を高める
これにより、“人を減らさずにコスト構造を整える”ことが可能になります。
■ 穏やかな最適化:自然退職+採用抑制
人件費最適化で最も重要なのは、“急激に減らさないこと”です。
私たちは、
自然退職(年間数%の退職率)
採用抑制(補充を計画的に止める)
を組み合わせて、穏やかに最適化するアプローチをとります。
これにより、現場に混乱を与えず、1年〜2年で年間約2,750万円(550万円×5人)規模の人件費是正を見込むことができます。
■ “整う組織”は、生産性が上がるだけでなく、離職も減る
「人件費の適正化」という言葉には、冷たさを感じる方もいるかもしれません。
しかし実際には、人が安心して働ける職場を取り戻すプロセスでもあります。
業務が整えば、
残業が減る
休日が確保される
教育・チーム会議などに時間を使える
といった“余白”が生まれます。
その結果、
離職率の低下 → 採用コストの減少 → 組織の安定化
という好循環が起こります。
「整う組織」とは、
単に人件費が下がる組織ではなく、“人が定着し、成果が出る組織”なのです。
■ 数字で見える「構造改革の効果」
指標 | Before | After(想定) | 改善効果 |
稼働病床数 | 30床 | 45床 | 年間約3億円の増収効果(1床2,000万円換算) |
看護師数(常勤換算) | 50人 | 約45人(自然退職分の補充抑制) | 年間約2,750万円の人件費最適化(550万円×5人) |
時間外労働 | 月20時間/人 | 月10時間/人 | 残業削減+離職防止効果 |
これらの効果は、いずれも「構造を整える」ことの結果です。
努力や精神論ではなく、プロセス設計とデータに基づいた改革が鍵になります。
■ まとめ
人件費の適正化は「人を減らす」ことではなく、
“人が活かされる構造を取り戻す”こと。
構造が整えば、数字が変わり、文化が変わる。
そしてそれが、病院の持続可能性を支える最も確実な方法です。
次回(第4回)は、
「STEP3:生まれた利益を未来へ再投資する」― 経営余力をどう使うか
をテーマに、DX・人材育成・地域連携への展開モデルを紹介します。
下記の資料をご希望の方はお役立ち資料よりお申し込みください

この記事を書いた人

著者名
兄井 利昌
役職
業務プロセス改善コンサルティング部
部長
総務省アドバイザー


業務改善・働き方改革・医師人事制度構築などに精通。徹底した現場主義と、個々に寄り添うフレキシブルな対応力で、多くのファン顧客を抱える。

