
“検索できない”現場の最適解を、経営幹部同士で深める時間に
2026年5月22日(金)、TODA HALL & CONFERENCE TOKYOにて、医療機関の経営者・経営幹部の皆さまを対象に「トップマネジメントセミナーTOKYO 2026」を開催しました。
本セミナーのテーマは、
“検索できない”現場の「最適解」を、経営幹部同士で深める戦略会議。
2026年診療報酬改定、人口減少、人材不足、地域における医療提供体制の変化など、病院経営を取り巻く環境はますます複雑さを増しています。
情報や知識はWeb上で得られる時代になりましたが、「では、自院はどう動くべきか」という答えは、画一的な情報だけでは導き出せません。
だからこそ今回は、対面の場で経営幹部同士が集い、講演・事例共有・交流セッション・パネルQ&Aを通じて、それぞれの現場における最適解を考える時間となりました。
急性期病院を取り巻く環境変化と、これからの経営の問い
当日はまず、千葉大学医学部附属病院 副病院長 井上貴裕先生をお迎えし、
「2026診療報酬改定 × 人口減 × 人材不足 急性期病院の生き残る戦略」
をテーマにご講演いただきました。
急性期病院を取り巻く外部環境が大きく変化する中で、病院経営に求められる視点について、多角的にお話しいただきました。
続いて、日本経営 代表取締役社長 橋本竜也より、
「この10年で変わった病院経営の問い」
をテーマに講演を行いました。
病院経営において、これまで重視されてきた問いと、これから向き合うべき問いは変化しています。
戦略を立てるだけでなく、その戦略をいかに現場で実行し、成果につなげていくのか。
その実行力こそが、これからの病院経営において重要なテーマになっています。
戦略・人事・業務プロセスの3つの視点から事例を共有
橋本の講演を受け、後半では日本経営のコンサルタント3名より、それぞれの専門領域から事例講演を行いました。
戦略コンサルティング領域からは、吉岡諒哉より、困難事例と成功事例を交えながら、病院経営における戦略実行のポイントを紹介しました。
組織・人事コンサルティング領域からは、太田昇蔵より、医師人事・マネジメントをテーマに、病院組織における人材マネジメントの課題と取り組みについて紹介しました。
そして、業務プロセス改革領域からは、業務プロセス改善コンサルティング部 部長の兄井利昌より、
「看護部から始まる経営改革」
をテーマに、看護部の離職率や組織文化の変化に向き合った業務プロセス改革事例を紹介しました。
看護部から始まる経営改革

兄井の講演で中心となったのは、単なる業務改善ではなく、
「方針と現場をどのようにつなぐか」
という視点です。
病院では、方針や戦略が立てられていても、現場で実行されなければ成果にはつながりません。
「現場が動かない」のではなく、現場が自ら動きたくなる状態をどうつくるのか。
そのためには、業務の流れを整えるだけでなく、管理者や組織のマネジメントのあり方そのものを変えていく必要があります。
講演では、看護師の離職率が高く、特に若手・中途職員の定着に課題を抱えていた病院の事例が紹介されました。
表面的には個人的な事情として語られる離職理由の背景に、実際には「働きがいを感じられない」「成長が見えない」「患者さんのために働けている実感が持ちにくい」といった組織文化上の課題が見えてきたといいます。
改善の目的は、患者価値を高めること
業務改善というと、申し送り時間の短縮、歩行距離の削減、記録業務の見直しなど、目に見えるムダの削減に注目が集まりがちです。
もちろん、そうした改善は重要です。管理者や現場職員に余白を生み出すためにも、具体的な業務の見直しは欠かせません。
しかし、兄井が強調したのは、改善の目的を
「患者さんにとって価値ある時間を増やすこと」
に置くという考え方でした。
看護師が楽になるためだけではなく、患者さんのそばにいる時間をどう増やすか。
患者さんにとって付加価値の高い時間を、限られた勤務時間の中でどう生み出すか。
この問いを軸に置くことで、看護部だけでなく、多職種を巻き込んだ改善につながっていきます。
「看護部が忙しいから」ではなく、
「患者さんにとって必要だから、一緒に解決したい」。
この視点の転換が、部門を超えた改革を進めるうえで重要になります。
マネジメントの変化が、組織文化を変える
事例の中では、管理者が「正解を持って指示する存在」から、現場の声を受け止め、問いを投げかけ、ともに考える存在へと変化していくプロセスも紹介されました。
提案型の職員を増やしたいのであれば、まずは提案を受け止める側のマネジメントが変わる必要があります。
失敗を過度に恐れず、現場が考え、試し、学ぶことを支える。
その積み重ねが、職員の発言の質や会議の空気を変え、組織文化の変化につながっていきます。
実際の事例では、離職率の低下や、現場からの提案の増加といった成果も生まれました。
数字としての成果だけでなく、「言っても無駄」という空気が変わり、現場が患者価値を起点に考え始めたことが、大きな変化であったと紹介されました。
経営幹部同士で、現場の最適解を考える

講演後には、参加者交流セッションを実施しました。
テーマは、「本日の学び・気づき」。
参加者同士がテーブルごとに意見を交わし、自院の課題や、これから取り組みたいことについて共有する時間となりました。
その後のパネルQ&Aセッションでは、講師陣が登壇し、参加者から寄せられた質問に回答しました。
講演で得た知識を自院の実践にどう落とし込むかについて、より具体的に考える機会となりました。
現場を見ることから、経営改革は始まる
今回のセミナーを通じて改めて見えてきたのは、病院経営における実行力の重要性です。
戦略を立てること。
組織や人事の仕組みを整えること。
業務プロセスを見直すこと。
これらは別々の取り組みではなく、現場で実行されて初めて、経営成果につながっていきます。
看護部で起きている課題も、看護部だけの問題ではありません。
病院全体の実行力、組織文化、そして経営成果にもつながる重要なテーマです。
日本経営では、今後も医療機関の皆さまとともに、経営と現場をつなぎ、持続可能な病院経営の実現に向けた取り組みを支援してまいります。
ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
この記事を書いた人

著者名
兄井 利昌
役職
業務プロセス改善コンサルティング部
部長
総務省アドバイザー


業務改善・働き方改革・医師人事制度構築などに精通。徹底した現場主義と、個々に寄り添うフレキシブルな対応力で、多くのファン顧客を抱える。

