2026年4月18日、千葉県・鴨川市にある亀田総合病院にて、「となりの看護部 Vol.2 〜亀田看護モデル2.0の成功要因とDX推進〜」を開催した。
当日は、全国各地から病院経営層・看護部長・看護管理者が参加。 講演だけでなく、ワークショップ、病棟ラウンド(現場見学)を通して、“なぜ亀田総合病院は変革を実装できているのか”を多面的に体感する一日となった。
会場では、単なる成功事例の共有ではなく、「自院にどう持ち帰るか」という視点が繰り返し強調された。
オープニングでは、今回のセミナーの目的として、次のようなメッセージが共有された。
「“亀田だからできる”で終わらせるのではなく、“なぜそれが実現できているのか”を考えてほしい」
これは、病棟ラウンドや講演全体を通じて、参加者に投げかけられた重要な視点だった。

「地域に必要な医療を守る」ための経営戦略
亀田総合病院 院長・亀田俊明氏の講演では、人口減少が進む地域において、いかに医療を持続可能にするかという視点から、病院経営の考え方が語られた。

亀田総合病院は、人口減少が進む地域にありながら、約1,000床規模の医療体制を維持している。
その背景には、“地域医療を守るためには、地域の中だけを見ていては成立しない”という考えがある。
講演では、国際医療・DX・研究・教育・人材育成などを一体で推進しながら、「ローカル&グローバル」という考え方で病院の価値を高めていることが紹介された。
また、DXについても、単なる効率化ではなく、“患者のそばにいる時間を増やすための手段”として位置づけられていた点が印象的だった。
AIやデータ基盤の活用、遠隔医療、デジタル病理など、さまざまな取り組みが紹介されたが、その根底にあったのは「人が本来向き合うべきケアに時間を使う」という思想だった。

看護部改革は、“会議改革”から始まった
続いて登壇した看護部長・渡邉八重子氏からは、「未来に向けて働く看護組織」をテーマに、看護部改革の実践について共有された。

特に印象的だったのは、“会議のあり方”を徹底的に見直した取り組みである。
従来の会議体にどれだけの時間とコストがかかっているかを可視化し、必要性を問い直した結果、年間数百万円規模の人的コスト削減につながったという。
しかし目的は単なる効率化ではない。
削減できた時間を、現場マネジメントやPDCAに再投資することで、看護管理者が本来向き合うべき業務へ時間を振り向けていた。
“忙しいから改善できない”ではなく、“改善するために時間をつくる”。
その考え方は、多くの参加者にとって大きな示唆になったのではないだろうか。

病棟ラウンドで見えた「方針と現場の接続」
午後には、実際の病棟・ICUを巡る病棟ラウンドを実施。
参加者は、現場スタッフの動きや空間設計、情報共有のあり方などを見学しながら、「なぜこの運営が機能しているのか」を考察した。
ラウンドでは、単に設備が整っているというだけではなく、“トップの意思決定”と“現場運営”がつながっていることが随所に感じられた。
また、参加者同士でも活発な意見交換が行われ、「自院ならどう応用できるか」という視点で対話が続いていたのが印象的だった。

ドクターヘリ到着――地域医療の最前線を目の当たりに
病棟ラウンドの途中、ちょうどドクターヘリが到着する場面に立ち会うことになった。
ヘリポートへ向かうスタッフの動き、救急搬送を支える連携体制。
参加者にとっても、“地域の最後の砦”として医療を担う現場の緊張感を、リアルに感じる瞬間となった。
この偶然の出来事もまた、亀田総合病院が日々どのような医療を担っているのかを象徴する場面だったように感じる。

「理念」だけで終わらせない組織へ
今回のセミナーを通して見えてきたのは、亀田総合病院の取り組みが、単なる“先進事例”ではなく、経営・看護・現場運営が一貫した思想で接続されているということだった。
そして、その思想を実装するために、DX、人材育成、会議改革、病棟運営など、具体的な仕組みに落とし込まれていた。
医療を取り巻く環境が厳しさを増す中で、“理念を掲げるだけではなく、どう現場に実装するか”。
その問いに向き合うヒントが、多く詰まった一日だった。
この記事を書いた人

著者名
兄井 利昌
役職
業務プロセス改善コンサルティング部
部長
総務省アドバイザー


業務改善・働き方改革・医師人事制度構築などに精通。徹底した現場主義と、個々に寄り添うフレキシブルな対応力で、多くのファン顧客を抱える。

