第28回日本医療マネジメント学会学術総会 ランチョンセミナー開催レポート

2026年5月29日(金)、ポートメッセなごやにて開催された第28回日本医療マネジメント学会学術総会において、ランチョンセミナーを開催しました。
本セミナーでは、関西学院大学 経営戦略研究科 教授 平木秀輔先生を座長にお迎えし、「なぜ今、外来改革なのか? 外来フローを最適化するリーンの実践」をテーマに、外来における業務の流れをどのように捉え、改善につなげていくかについて考えました。
当日は150席が満席となり、立ち見が出るほど多くの方にご参加いただきました。最後まで熱心に耳を傾けてくださる方が多く、外来改革やリーンの実践への関心の高さを感じる機会となりました。
現在、多くの病院が厳しい経営環境に直面しています。人材不足、働き方改革への対応、医療需要の変化など、医療機関を取り巻く課題は複雑化しています。これまでのように、現場の努力やマンパワーに頼るだけでは、持続可能な病院経営を実現することは難しくなりつつあります。
そのような状況の中で、あらためて注目すべき領域の一つが「外来」です。
病棟の効率化や在院日数の適正化に取り組む病院は少なくありません。しかし、病棟を動かす入口として、外来の流れが果たす役割は非常に大きいものです。外来では、医師、看護師、クラーク、医事課、検査部門など、多くの職種が短時間のうちに関わります。そのため、情報の伝達や患者の流れが少し滞るだけでも、待ち時間の増加、医師の時間の分断、スタッフの負担増加につながります。
外来の停滞は、単なる待ち時間の問題ではありません。紹介患者の受け入れ、入院につながる診療、検査や説明の流れなど、病院全体の診療機能にも影響します。つまり、外来改革は「患者サービスの改善」であると同時に、「病院全体の流れを整える経営課題」でもあるのです。
一方で、外来改革を進めようとすると、経営層と現場の間にギャップが生じることがあります。経営層は、収益性や診療機能の最大化を意識し、数字や指標をもとに課題を捉えます。一方、現場では、日々の多忙さや人手不足の中で、「これ以上何をすればよいのか」という負担感が生まれやすくなります。
このギャップは、どちらか一方が間違っているというわけではありません。目指す方向は同じでも、見えている景色が異なるために、同じ課題を同じ言葉で共有できていない状態だといえます。
そこで重要になるのが、データを現場の実践につなげる視点です。待ち時間、稼働率、収益などのデータを提示するだけでは、現場の行動変容にはつながりにくい場合があります。数字は課題を示すための重要な材料ですが、それだけでは「どこを、どのように変えればよいのか」が見えにくいからです。
リーンの考え方では、患者にとって価値のある時間と、価値につながりにくい滞留時間を分けて捉えます。診察や説明、処置など、患者が直接サービスを受けている時間は価値を生む時間です。一方で、移動、待機、情報の伝達待ち、会計待ちなどは、患者にとってムダであり、価値につながりにくい時間です。
外来フローを見える化すると、患者の流れの裏側に、情報の流れの滞りがあることが見えてきます。紙の問診票が次の工程に回るまでの時間、検査結果が確認できるようになるまでの時間、処方や会計情報が共有されるまでの時間。こうした情報の滞留が、患者の待ち時間を生み、医師やスタッフの動きを分断している場合があります。
そのため、外来改革では、患者フローと情報フローの両方を見える化することが重要です。VSM(バリュー・ストリーム・マップ)などの手法を用いることで、どこに滞留があり、どの工程で情報が止まっているのかを、職種を超えて共有することができます。
ここで大切なのは、現場を直接観察し、同じ事実を見ながら、多職種で対話することです。医師、看護師、クラーク、医事課などが共通の視点で現場を見ることで、「誰が悪いのか」ではなく、「どの仕組みが滞留を生んでいるのか」に目を向けることができます。
リーンによる外来改革は、現場にさらなる負担を強いるための取り組みではありません。むしろ、プロセスのムダを取り除き、医師やスタッフが本来注力すべき業務に時間を使えるようにするための取り組みです。外来の流れを整えることは、患者の待ち時間を減らすだけでなく、医療従事者の負担軽減、診療機能の向上、病院全体の経営改善にもつながります。
外来を整えると、病院全体の流れが変わる。
今回のランチョンセミナーが、データの可視化と現場の実践を結びつけ、外来フローを最適化することの重要性について考えるきっかけになれば幸いです。
日本経営では、今後も医療現場の業務改善を、経営成果につなげるための情報発信と支援を行ってまいります。
また、会場では書籍『LEAN Innovation』の販売も行い、多くの皆さまにお立ち寄りいただきました。


ご参加いただいた皆さま、ならびに関係者の皆さまに心より御礼申しあげます。
この記事を書いた人

著者名
外池 薫子
役職
業務プロセス改善コンサルティング部
課長代理
Lean Certification GOLD LEVEL


現場の答えを一緒に見つける「伴走型」コンサルタント。人事制度構築・ 人材教育の知見も豊富。

