株式会社日本経営

【病院改革コラム連載 第4回】STEP3:生まれた利益を未来へ再投資する ― “持続可能な病院”をつくる

著者名

兄井 利昌

2025年11月17日

(全5回シリーズ「看護部から病院を変える」)


第1回から第3回まででお伝えしたように、病院改革の初期フェーズでは、
①稼働病床を増やして収益を取り戻し、
②人件費を整えて健全なコスト構造を築く、
という流れで「利益を生み出す仕組み」を確立します。
しかし、改革の本当の価値は、その先にあります。それは、生まれた利益を未来へどう活かすかです。


■ 病院改革の目的は、“黒字化”ではなく“余力の創出”

多くの病院が赤字から黒字への転換を目指します。けれど、黒字化そのものはゴールではありません。黒字になっても、「職員の負担が減らない」「人が育たない」状態では、数年後に同じ課題が再び現れます。
経営改革の本質は、“利益を出す仕組み”をつくることではなく、“利益を活かす力”をつくることにあります。
ここで重要なのが、私たちが提唱する3つの再投資領域です。


■ ① DX投資 ― 時間を生み出し、再設計する

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単にシステムを入れることではありません。「職員と患者の時間を取り戻すための仕組みづくり」です。
たとえば、
看護記録の電子化や入力支援
病棟業務のタスク見える化
AIによる退院予測や入退院調整
これらは、単に効率化のためではなく、「人が本来すべき仕事」に時間を戻すための仕組みです。
導入においては、システム選定よりも、「どう使われるか」「どう現場に根づくか」を設計することが重要です。私たちは、システム導入後の現場活用プロジェクトを伴走し、「導入して終わり」ではなく「運用して変わる」を支援しています。


■ ② 人材投資 ― “仕組みを動かす人”を育てる

改革を支えるのは、制度でもツールでもなく「人」です。病院が変わり続けるためには、“仕組みを動かす人”=ファシリテーター人材が不可欠です。
業務改善を推進できる中堅看護師
多職種連携をデザインできる師長
現場の課題を経営言語に翻訳できる管理者
こうした人材を育てることが、病院の持続可能性を決定づけます。
私たちは、現場での改善活動を通じて、「考える・伝える・動かす」3つの力を育成する伴走型の教育プログラムを提供しています。それは、研修ではなく“実践を通じた学び”。職員が“変化をつくる主体”へ成長していくプロセスです。


■ ③ 地域投資 ― 病院の外とつながり、価値を広げる

人口減少と地域包括ケアの進展により、今後の病院は「単独最適」では生き残れません。
近隣病院との入退院調整
在宅・介護との情報共有
地域リハ・訪問看護との連携
これらの連携は、“地域全体で患者を支える仕組み”をつくる再投資です。単に地域連携室の機能強化ではなく、「病院の外に広がる価値づくり」として再設計する必要があります。
稼働病床が増え、人件費構造が整った病院だからこそ、地域に時間と知恵を投資できる――それが次の成長ステージです。


■ 投資は「支出」ではなく「構造改革の延長」

再投資という言葉を聞くと、「新たな支出が増えるのでは」と感じる方もいるかもしれません。しかし、私たちが提唱するのは、“余力の循環”です。

稼働病床の増加による収益向上(例:年間約3億円)+ 人件費最適化によるコスト削減(年間約2,750万円)= 年間約3.3億円の経営余力を創出

この余力の一部をDX・人材・地域に再配分することで、「利益が生まれ→活かされ→再び利益を生む」構造を築くことができます。


■ “再投資”が文化を育てる

利益の使い方は、その組織の価値観を映します。職員の働きやすさに投資する病院は、人が集まるDXに投資する病院は、業務が整い、余力が生まれる地域に投資する病院は、信頼が集まり、選ばれる再投資とは、経営理念を「行動」に変えるプロセスです。そしてこのプロセスが、やがて“文化”を形成します。


■ まとめ

病院改革のゴールは、黒字化ではなく「余力の活用」。その余力を、DX・人材・地域へと循環させることで、“利益を生み出し、未来へ投資できる病院”が実現します。

次回(第5回)は、いよいよ最終回。
「仕組みだけでなく文化を変える」― 動き続ける病院をつくる
をテーマに、改革を一過性で終わらせないための“文化のデザイン”を解説します。

下記の資料をご希望の方はお役立ち資料よりお申し込みください

病院経営改革提案:看護部から始める収益向上と持続的成長

この記事を書いた人

著者名

兄井 利昌

役職

業務プロセス改善コンサルティング部
部長
総務省アドバイザー

業務改善・働き方改革・医師人事制度構築などに精通。徹底した現場主義と、個々に寄り添うフレキシブルな対応力で、多くのファン顧客を抱える。

この記事をシェアする

TOPコラム

【病院改革コラム連載 第4回】S...