(全5回シリーズ「看護部DXが生み出す“新しい時間”と“新しい可能性”」)
第1回では「なぜ今、看護部DXが必要なのか」を、
第2回では「なぜDXが進まないのか」をお伝えしました。
そして今回からは、“どうすればDXが動くのか”という実践の話です。
DXを動かすカギは、
「導入」ではなく「設計」、
「管理」ではなく「伴走」、
そして「指示」ではなく「共創」にあります。
私たちは、看護部を中心としたDX改革を、
次の3ステップで進めています。
■ Step 1:現状分析 ― “どうありたいか”と“何が問題か”を見極める
DXの出発点は、システム導入でもデータ分析でもなく、
「現場の本当の課題を見える化すること」です。
たとえば、「残業が減らない」「患者受け入れが進まない」といった表面的な現象の裏には、
「申し送りの重複」「情報が伝わらない」「優先順位が共有されていない」など、
多層的な要因が隠れています。
そこで活用するのが、VSM(Value Stream Mapping/業務可視化手法)です。
一日の業務フローを時系列で書き出し、
どこで時間が止まり、どこで情報が滞っているかを可視化します。
この段階で大切なのは、「責任を探す」のではなく、「構造を探す」こと。
忙しさや非効率の原因を人ではなく“仕組み”として捉えることで、
現場の納得感が高まります。
■ Step 2:改善設計 ― “システムを使う業務”を再設計する
現状分析で課題の構造が見えたら、
次は業務の流れそのものを再設計します。
ここで重要なのは、
「システムに業務を合わせる」のではなく、「業務を目的に合わせて整える」という発想です。
たとえば、
記録はどのタイミングで、誰が、何のために行うのか?
転記は必要なのか? 自動化できないか?
情報共有はどの単位で行うと最も効果的か?
これらを整理すると、
「削減すべき手間」「強化すべき連携」「データ活用の可能性」が浮かび上がります。
改善設計のゴールは、“時間を生み出す構造をつくること”です。
私たちはここで、現場のメンバーと一緒に改善案を作成します。
看護師・クラーク・リーダー・管理職が一堂に会し、
「業務を設計する」体験そのものが、すでにDXの始まりです。
■ Step 3:実行・伴走支援 ― “動かす”ために現場とともに走る
設計しただけでは、DXは動きません。
現場が納得し、動き、結果を感じるまでの“伴走”が必要です。
私たちは、モデル病棟を設定し、
約8ヶ月間でPDCAサイクルを2週間単位で回していきます。
最初の2〜3ヶ月で小さな改善を積み上げ、
その成果(時間削減・残業減・満足度向上)を見える形で共有します。
成果が“数字”と“実感”の両方で見えた瞬間、現場は動き出します。
ここで大切なのは、「失敗を許容する設計」です。
すべてを完璧に始めるより、まず動いてみて、
改善を積み重ねるプロセスそのものが、DXの文化になります。
■ 成果が“自走”へとつながる
8ヶ月間の改善活動で、
現場には「仕組みを変えれば成果が出る」という成功体験が残ります。
これが“自走の文化”の第一歩です。
そして、このモデル病棟での成果をもとに、
他病棟・他部門へ展開していくのが次のフェーズ(6〜10ヶ月)。
この時点では、現場から「他でもやってみたい」という声が上がり始めます。
DXが“導入”から“文化”に変わる瞬間です。
■ まとめ
DXを動かすには、「導入」ではなく「構造化」、
「管理」ではなく「伴走」、
「指示」ではなく「共創」。
看護部が自ら改善を設計し、行動を変えるとき、
DXは初めて“動く”ようになります。
次回(第4回)は、
この改善の先にどんな成果が生まれるのか――
「DXが生み出す新しい時間」について、
実際の効果や経営的インパクトの視点から掘り下げていきます。
下記の資料をご希望の方はお役立ち資料よりお申し込みください

この記事を書いた人

著者名
兄井 利昌
役職
業務プロセス改善コンサルティング部
部長
総務省アドバイザー


業務改善・働き方改革・医師人事制度構築などに精通。徹底した現場主義と、個々に寄り添うフレキシブルな対応力で、多くのファン顧客を抱える。

