株式会社日本経営

なぜ病院改革は現場で止まるのか【第4回】NKリーンマネジメントとは何か 

著者名

兄井 利昌

2026年2月15日

  • 第1回|なぜ今、病院は変わらなければならないのか

  • 第2回|看護部改革が「実行力の差」を生む理由

  • 第3回|忙しいのに成果が出ない病院の構造とLEANの役割

  • 第4回|NKリーンマネジメントとは何か

  • 第5回|NKリーンマネジメントで成果を出し続ける病院の条件

NKリーンマネジメントとは何か

――哲学・仕組み・方法論で病院を変える

前回は、「忙しいのに成果が出ない」病院に共通する構造と、その打開策としてLEANの役割を整理しました。

では、そのLEANの考え方を医療現場で継続的に機能させるための枠組みとは何か。

その答えが、NKリーンマネジメントです。

NKリーンマネジメントは、単なる業務改善手法ではありません。

「現場が自ら考え、動き、成果を出し続ける」ためのマネジメントシステムです。

 

改善が続かない理由は「やり方」ではない

多くの病院で、これまでにも改善活動は行われてきました。

業務効率化、5S、ICT導入、委員会活動――いずれも正しい取り組みです。

しかし、一定期間が過ぎると元に戻ってしまう。

こうした経験を持つ病院は少なくありません。

この原因は、改善の内容そのものではなく、改善を支える土台が欠けていることにあります。

改善が「個人の努力」や「一時的なプロジェクト」に依存している限り、忙しさに押し戻され、定着しません。

NKリーンマネジメントが目指すのは、改善を特別な活動ではなく、日常のマネジメントそのものに組み込むことです。

 

NKリーンマネジメントを支える3つの要素

NKリーンマネジメントは、

哲学・仕組み・方法論の3つがそろって初めて機能します。

① 哲学:患者価値を起点に考える

NKリーンマネジメントの出発点は、「患者価値」です。
ただし、ここでいう患者価値は、抽象的な理念ではありません。
時間という共通の尺度で捉えます。

患者にとって意味のある時間――診察、ケア、説明、安心。
一方で、待ち時間、手戻り、移動、情報の行き違いは、価値を生まない時間です。

患者・看護師・医師・事務職、すべての職種が共有できる「時間」という物差しを用いることで、改善の方向性が揃います。

 

② 仕組み:現場が回し続けられる構造

哲学だけでは、現場は動きません。
NKリーンマネジメントでは、現場が改善を回し続けられる仕組みを重視します。

具体的には、

  • 誰が改善を主導するのか

  • 誰が支援するのか

  • どの単位でPDCAを回すのか

  • どこまでを現場に任せるのか

こうした役割と権限を明確にします。

前回までに紹介した病院では、改善を「師長一人の頑張り」にしませんでした。
役割を分担し、現場が孤立しない体制をつくったからこそ、改善が途中で止まらなかったのです。

 

③ 方法論:実行を支える具体的な技術

NKリーンマネジメントでは、現地現物、VSM、PDCA、標準作業、可視化といった方法論を用います。

重要なのは、これらを道具として使い分けることです。

たとえば、VSMは業務を整理するための図ではありません。

患者の1日の流れを可視化し、「どこで患者価値が失われているか」を明らかにするための手法です。

この視点があるからこそ、

  • 歩行距離の65%削減

  • 時間外労働コストの数千万円規模の削減

といった成果につながりました。

 

NKリーンマネジメントが病院経営の基盤になる理由

NKリーンマネジメントの強みは、

改善を“文化”として根づかせる点にあります。

戦略は変わっても、制度が変わっても、現場が患者価値を起点に考え、PDCAを回せる力があれば、病院は環境変化に対応できます。

だからこそ、NKリーンマネジメントは、短期的なコスト削減策ではなく、病院経営の基盤となるのです。

 

次回はいよいよ最終回です。

NKリーンマネジメントをどのように現場に落とし込み、改善を一過性で終わらせず、自走する病院へとつなげていくのか。

その実行プロセスを具体的に解説します。

この記事を書いた人

著者名

兄井 利昌

役職

業務プロセス改善コンサルティング部
部長
総務省アドバイザー

業務改善・働き方改革・医師人事制度構築などに精通。徹底した現場主義と、個々に寄り添うフレキシブルな対応力で、多くのファン顧客を抱える。

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