第1回|なぜ今、病院は変わらなければならないのか
第2回|看護部改革が「実行力の差」を生む理由
第3回|忙しいのに成果が出ない病院の構造とLEANの役割
第4回|NKリーンマネジメントとは何か
第5回|NKリーンマネジメントで成果を出し続ける病院の条件
NKリーンマネジメントとは何か
――哲学・仕組み・方法論で病院を変える
前回は、「忙しいのに成果が出ない」病院に共通する構造と、その打開策としてLEANの役割を整理しました。
では、そのLEANの考え方を医療現場で継続的に機能させるための枠組みとは何か。
その答えが、NKリーンマネジメントです。
NKリーンマネジメントは、単なる業務改善手法ではありません。
「現場が自ら考え、動き、成果を出し続ける」ためのマネジメントシステムです。
改善が続かない理由は「やり方」ではない
多くの病院で、これまでにも改善活動は行われてきました。
業務効率化、5S、ICT導入、委員会活動――いずれも正しい取り組みです。
しかし、一定期間が過ぎると元に戻ってしまう。
こうした経験を持つ病院は少なくありません。
この原因は、改善の内容そのものではなく、改善を支える土台が欠けていることにあります。
改善が「個人の努力」や「一時的なプロジェクト」に依存している限り、忙しさに押し戻され、定着しません。
NKリーンマネジメントが目指すのは、改善を特別な活動ではなく、日常のマネジメントそのものに組み込むことです。
NKリーンマネジメントを支える3つの要素
NKリーンマネジメントは、
哲学・仕組み・方法論の3つがそろって初めて機能します。
① 哲学:患者価値を起点に考える
NKリーンマネジメントの出発点は、「患者価値」です。
ただし、ここでいう患者価値は、抽象的な理念ではありません。
時間という共通の尺度で捉えます。
患者にとって意味のある時間――診察、ケア、説明、安心。
一方で、待ち時間、手戻り、移動、情報の行き違いは、価値を生まない時間です。
患者・看護師・医師・事務職、すべての職種が共有できる「時間」という物差しを用いることで、改善の方向性が揃います。
② 仕組み:現場が回し続けられる構造
哲学だけでは、現場は動きません。
NKリーンマネジメントでは、現場が改善を回し続けられる仕組みを重視します。
具体的には、
誰が改善を主導するのか
誰が支援するのか
どの単位でPDCAを回すのか
どこまでを現場に任せるのか
こうした役割と権限を明確にします。
前回までに紹介した病院では、改善を「師長一人の頑張り」にしませんでした。
役割を分担し、現場が孤立しない体制をつくったからこそ、改善が途中で止まらなかったのです。
③ 方法論:実行を支える具体的な技術
NKリーンマネジメントでは、現地現物、VSM、PDCA、標準作業、可視化といった方法論を用います。
重要なのは、これらを道具として使い分けることです。
たとえば、VSMは業務を整理するための図ではありません。
患者の1日の流れを可視化し、「どこで患者価値が失われているか」を明らかにするための手法です。
この視点があるからこそ、
歩行距離の65%削減
時間外労働コストの数千万円規模の削減
といった成果につながりました。
NKリーンマネジメントが病院経営の基盤になる理由
NKリーンマネジメントの強みは、
改善を“文化”として根づかせる点にあります。
戦略は変わっても、制度が変わっても、現場が患者価値を起点に考え、PDCAを回せる力があれば、病院は環境変化に対応できます。
だからこそ、NKリーンマネジメントは、短期的なコスト削減策ではなく、病院経営の基盤となるのです。
次回はいよいよ最終回です。
NKリーンマネジメントをどのように現場に落とし込み、改善を一過性で終わらせず、自走する病院へとつなげていくのか。
その実行プロセスを具体的に解説します。
この記事を書いた人

著者名
兄井 利昌
役職
業務プロセス改善コンサルティング部
部長
総務省アドバイザー


業務改善・働き方改革・医師人事制度構築などに精通。徹底した現場主義と、個々に寄り添うフレキシブルな対応力で、多くのファン顧客を抱える。

