株式会社日本経営

なぜ病院改革は現場で止まるのか【第5回】NKリーンマネジメントで成果を出し続ける病院の条件 

著者名

兄井 利昌

2026年2月22日

  • 第1回|なぜ今、病院は変わらなければならないのか

  • 第2回|看護部改革が「実行力の差」を生む理由

  • 第3回|忙しいのに成果が出ない病院の構造とLEANの役割

  • 第4回|NKリーンマネジメントとは何か

  • 第5回|NKリーンマネジメントで成果を出し続ける病院の条件

NKリーンマネジメントで成果を出し続ける病院の条件 

――改善を「一過性」で終わらせないために

これまでの連載では、看護部を起点とした改革が、離職率や時間外労働、人件費といった経営指標を実際に動かしてきた事例を紹介し、その背景にある構造と考え方を整理してきました。

最終回となる今回は、NKリーンマネジメントによる改革を、いかにして「続く成果」に変えていくのか、その条件について考えます。

多くの病院で聞かれるのが、

「最初はうまくいったが、時間が経つと元に戻ってしまった」という声です。

改善が成果につながらないのではなく、成果が続かない

この壁を越えられるかどうかが、病院経営の分かれ目になります。

 

成果が止まる病院に共通する落とし穴

改善が定着しない病院には、いくつかの共通点があります。

  • 改善が一部の管理職や担当者に依存している

  • 成果が出ても、評価や共有の仕組みがない

  • 忙しさが戻ると、改善が後回しになる

  • 改善が「イベント」として扱われている

こうした状態では、どれほど正しい方法を用いても、改善は長続きしません。

NKリーンマネジメントが重視するのは、改善を続けられる構造をつくることです。

 

条件① 改善を「仕組み」として回しているか

成果を出し続ける病院では、改善が個人の努力に依存していません。

改善のテーマ設定、進捗管理、振り返りが、あらかじめ設計された流れの中で行われています。

具体的には、

  • 改善テーマは患者価値の観点から選ばれている

  • PDCAは2週間単位など、短いサイクルで回されている

  • 改善の進捗が可視化され、放置されない

こうした仕組みがあることで、改善は「忙しいからできないもの」ではなく、

「日常業務の一部」になります。

 

条件② 現場が孤立しない推進体制があるか

NKリーンマネジメントで成果を上げている病院では、改善を師長一人に任せていません

現場で改善を進める人、支援する人、調整する人、それぞれの役割が明確です。

これにより、

  • 現場が「一人で抱え込む」状態を防ぐ

  • 他部署との調整が滞らない

  • 改善が途中で止まりにくくなる

実際、前回までに紹介した病院では、この推進体制があったからこそ、

年間1,600万円、3,700万円規模のコスト改善が一過性で終わらず、

継続的な成果につながっています。

 

条件③ 経営層が「現場を見続けているか」

成果を出し続ける病院に共通しているのが、経営層が現場から離れていないことです。

ここで重要なのは、現場を「管理」することではありません。

現場の変化を見て、共に考え、支える姿勢です。

改善が進む過程では、必ず不満や戸惑いが生じます。

「上層部は現場を分かっていない」

「忙しさが分かっていない」

こうした声が出るのは、改善が進んでいる証拠でもあります。

だからこそ、経営層が現場に足を運び、対話を重ねることが、改善を続ける大きな推進力になります。

 

条件④ 成果を病院全体で共有しているか

改善を文化として根づかせるために欠かせないのが、成果の共有です。

NKリーンマネジメントでは、一定期間ごとに成果発表の場を設け、

看護部だけでなく、医師や事務部門、経営層と成果を共有します。

これは単なる報告会ではありません。

「病院全体で改善に取り組んでいる」というメッセージを内外に示す重要な機会です。

このプロセスを通じて、改善は看護部の取り組みから、病院全体の取り組みへと進化していきます。

 

NKリーンマネジメントがもたらす本当の価値

NKリーンマネジメントの価値は、

  • 離職率の改善

  • 時間外労働の削減

  • 人件費の圧縮

といった数字にとどまりません。

現場が自ら課題を見つけ、改善を回し続ける力――

この「自走力」こそが、環境変化の激しい時代に病院を支える最大の資産になります。

看護部から始まった小さな改善は、やがて病院全体へと広がり、

質と収益を両立させる力へと変わっていきます。

それこそが、NKリーンマネジメントで成果を出し続ける病院の条件なのです。

 


本連載では、看護部を起点に改革を進め、実際に成果を上げてきた病院の取り組みから、病院が変わるための条件を整理してきました。

そこから見えてきたのは、病院を変えるのは特別な戦略ではなく、実行できる構造であるということです。

NKリーンマネジメントは、忙しさの正体を見極め、患者価値を起点に改善を日常のマネジメントに組み込むための考え方です。

看護部から始まった小さな改善は、やがて病院全体へと広がります。

すでに多くの病院が変わろうと動き始めています。

これから問われるのは、その一歩を成果につなげ、続けられるかどうかです。

本連載が、病院の次の一歩を考えるきっかけになれば幸いです。

この記事を書いた人

著者名

兄井 利昌

役職

業務プロセス改善コンサルティング部
部長
総務省アドバイザー

業務改善・働き方改革・医師人事制度構築などに精通。徹底した現場主義と、個々に寄り添うフレキシブルな対応力で、多くのファン顧客を抱える。

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