中村 一郎 氏
地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター西市民病院 院長

病院概要
所在地:神戸市長田区一番町2 丁目4 番地
病床数:358 床(うち救急9 床、HCU7 床、身体合併4 床、未熟児2 床)
看護基準:7:1 看護
職員数:661人(専攻医・研修医を含む) 439人(看護師・助産師の合計)
患者数:外来:827人/日 入院:316人/日
救急指定:二次救急
看護体制、看護方式:一般病棟 7:1看護、地域包括ケア病棟 13:1|プライマリーナーシング、受け持ち制
ホームページ https://nishi.kcho.jp/
神戸市立医療センター西市民病院では、看護部から改善の声が上がったことをきっかけに、病院全体の業務改革が動き出した。院長としてどのような思いで改革に向き合い、経営としてどのように判断し、現場と向き合ってきたのか。今回はその背景と今後の展望について、院長の中村一郎氏に伺いました。
”看護部発”の改善提案、院長としてどう向き合い、経営判断を下したのか?
正直なところ、最初は「本当にコンサルが必要なのか?自分たちでできないのか?」という葛藤がありました。しかし、看護部だけではなく、他の部署でも共通の課題があると感じていましたし、現場の業務やプロセス、スタッフのマインドセットまで、根本的に見直す必要があると考えていました。ただ、病院全体で一気に行うのは難しいため、どこからどのように進めて行けばよいのかという課題を持っていました。その中で、病院の中で看護部は大きな組織ですので、病院全体を回して行く上で、潤滑油の役割を担っていただいている看護部トップの看護部長が強いモチベーションを持ってリーダーシップを発揮し、今回の改善提案をしてくれたため、できるだけスムーズに進められるようにバックアップしようと決めました。
日々の情報共有をどのように行い、改革の意志をどう重ねていったのか?
私が院長になったタイミングで看護部長もトップになられたので、毎朝、院長室で情報共有の時間を持つようにしていました。院内で起きていることや課題、取り組みについて、短い時間ですが毎日話すようにしています。そうやって日々コミュニケーションを取っていたので、看護部の思いや現場の状況はよく把握できていました。最終的にGoサインを出す際には、組織の決定プロセスを経た上で、スピーディーに良い形でスタートしてもらえたらと思っていました。
外部コンサルタントに託した役割と、経営としての期待とは?
経営が厳しい状況の中で、プロフェッショナルな視点から業務改善や安全管理、医療の質向上につながる提案をしてもらえることに期待していました。実際、当院はこれまでもコンサル会社と一緒に取り組むことで、経営面でも一定のあるいは一定以上の成果を上げている実績がありますので大いに期待していました。看護部という大きな部署が単独でコンサルと一緒に動くのは新しいチャレンジでしたが、病院全体にとっても大きな意味があると思っています。
2年前に看護部長になられてからいろいろな改革をされる中で、障壁となっているハードルがあったと思いますが、コンサルに入っていただくことで前に進めたのかなと思います。まだスタートしたばかりですが、当院の看護部だけでなく、全国的に一般化できる取り組みであると考えていますので、先駆けてチャンスを作ってもらえたことに感謝しています。
現場に広がった改善活動、どのような変化を感じたか?
最初にこの取り組みをスタートした病棟の様子は定期的に聞いていました。他の病棟にこのプロセスをどう広げていくかが重要で、病棟ごとに個性があって、同じやり方が必ずしもうまくいくわけじゃないことも聞いていました。月に一回、私と看護部長と事務局長の3人で院内回診を行っています。実際に現場を見て、師長やスタッフの声を聞くようにしていますし、現場の雰囲気やスタッフの動きが少しずつ変わってきているのを感じています。やはり、報告だけではなく、自分の目で見たり聞いたりすることが大事だと思います。
経営層としての現場との関わり方、そして院内の風土づくりとは?
当院の風土としては、職種間の垣根の低い、風通しの良い、ざっくばらんな風土といいますか、比較的気を使わずに気軽に意見を言い合える職場環境が特徴だと思っています。プロとしての厳しさや自覚を持つことは大事ですが、気軽に意見を言い合える雰囲気を大切にしています。コロナ禍で現場に行く機会が減った時期もありましたし、委員会や皆を集める機会も減った中でどうやって現場の職員にメッセージを伝えるかということには苦心しましたが、やはり現場に足を運んで直接コミュニケーションを取ることが、改善活動を進める上でもすごく大事だと感じています。
経営課題への成果と、今後さらに実現したいことは?
本当によくやっていただいたと思いますし、ここまで成果が上がりつつある中で、これを成功例として看護の質の向上だけでなく経営指標の改善として表すためにどうしたらいいか事務方とも話をしているところです。コロナ禍後、新規患者が増加し救急車も過去最高の4400台を超え入外ともに医業収益は上がってきていますが、人件費、医療材料費、委託費、その他もろもろの支出が大きくなっています。医療の効率化においては、質・安全性を高めつつ、業務の標準化と整理整頓を進めることで経営に貢献することは重要であり、今回の取り組みはそれにあたると思います。成果ということでは、これだけ増やせたというよりは、これだけ減らせたという成果が大きいと思います。マンパワーを要する時間を減らせたことは働き方改革にも通じるものがあり、職員の時間を大事にしてワークライフバランスに貢献できているのではないかと考えています。
昨今の厳しい経営状況の中では、仕事のやり方を変革することで医療・看護の質と安全性を向上させるだけでなく経費削減につなげることが必要です。今回看護部が先行的に目に見える形で具体的に取り組んでいただいたと思います、今年度は病院全体として、費用削減のワーキングチームを立ち上げ、成果につながる取り組みを実行することを幹部会で決定しましたので、看護部の取り組みはまさに嚆こうし矢といえます。
経営改革に迷う病院に向けて、トップとして伝えたいことは?
現場の課題、危機感などが発端になると思います。そして、現場を見ている各部署トップのリーダーシップと彼らを支えていく組織体制が重要だと思います。ポストコロナで新しい基準や体制が構築されていくなかで、変化することは組織が継続するためには非常に重要なことだと思います。
変わらないことは退化していく、劣化していくということとニアリーイコールなのだと思いますので、変わることに対するチャレンジを続け、現場の職員と議論しながら、病院を良い形に変化させていくことが重要になるでしょう。職員にも患者さんにも受け入れられる変化をし続けることは簡単なことではありませんが、これからの病院経営には必要なことだと思います。
看護部の提案から始まった改革は、院長の決断と現場の行動が重なり、病院全体へと広がり始めた。これからも現場と経営が対話を重ね、小さな挑戦を積み重ねながら、変化を続けていきます。
インタビュアー
株式会社日本経営 業務プロセス改善コンサルティング部 部長 兄井 利昌















