【回復期病棟】 武田副看護部長 西浦主任
【急性期病棟】 真鍋師長 山崎主任
【外 来】 戸松師長 古賀主任
【オ ペ 室】 川崎師長 辻巻主任

病院概要
社会医療法人栄公会 佐野記念病院
所在地:大阪府泉佐野市中町2−4−28
病床数:95床(2階 急性期病棟53床・3階 回復期リハビリテーション病棟42床)
看護基準:7:1看護
職員数:215名
看護職員数:96名
病院機能:二次救急指定医療機関
病院改革において、業務の効率化と患者ケアの質向上は非常に重要な要素です。LEAN(リーダー開発研修)の導入によって、現場スタッフが自発的に業務改善に取り組むことが可能となり、病院全体にわたる変革が進んでいます。今回は、回復期病棟、急性期病棟、外来、オペ室の4つの部署におけるLEANの取り組みが、どのように現場に変化をもたらし、業務の効率化と患者ケアの質向上に繋がったのかを、佐野記念病院の各部署リーダーたちに伺いました。
【回復期病棟】現場主体の改革が生んだ変化
回復期病棟では、コロナ禍で制限された離床してのデイルームでの食事を復活させ、スタッフが協力して患者に最適な食事タイミングを検討。業務効率と患者満足度が向上しました。

どのような改善が回復期病棟で始まりましたか?
(武田副看護部長)回復期では、まず食事の取り組みから始めました。当初は時間を決めてスタッフが病室前に集まり、その中で「こう変えたほうが良いのではないか」「こうしたほうが良いのではないか」といった声が上がるようになりました。そうした意見を取り入れ、現在では朝礼後に夜勤のスタッフも交えて、食事のタイミングに合わせてデイルームに入院中の方々を送迎し、皆さんに食事をしていただく形になっています。
当初は決まった時間に集まるだけでしたが、いまでは夜勤者・日勤者が一緒に意見交換を行いながら、患者さんにとって最適なタイミングや対応を考えるようになってきています。日々の取り組みの中で、さまざまな変化が生まれていると感じています。
(西浦主任)前回の取り組みに加えて、その後いろいろな取り組みがあったので、それらを反映させようと思いました。具体的には、人の選定を工夫したり、相談や報告をまめに行うよう意識しました。そうした結果、スタッフ自身が前に出る姿勢を見せるようになり、「自分たちも参加してしっかり回していかないといけない」という行動が見られるようになりました。少し言い方は変かもしれませんが、「助けられている」と感じる場面もあり、取り組みが進めやすくなったのかなと思っています。
また、多くの人に対して自分で決めつけずに相談するという姿勢も少しずつ身についてきたと思います。スタッフも言われたことをやるだけでなく、「こんな案もあるのでは」と新しい提案を出すようになってきました。もちろんムラがあり、良いときも悪いときもありますが、そうした変化を感じています。
スタッフの意識にどのような変化がありましたか?
(武田副看護部長)西村主任については、本当にスタッフのことをしっかり考えていると思います。この人にはこういう関わり方がいい、このスタッフにはこういう声かけが合う、ということを理解したうえで実践しているように感じます。
また、「こういうことをしてみたらどうか」という適切な意見もしっかり出しながら、スタッフの言葉を待つ姿勢も持っていて、その点もとても頼もしいと感じています。今後も走りすぎることなく、スタッフと共に取り組みをつくっていってほしいと思います。
(西浦主任)今までは武田師長のことを、「自分がやったことを修正してくれる人」というふうに見ていました。「いやいや、そこに行ったらあかんよ」「それは違うやろ」といった感じで、自分の行動を正してくれる存在だと思っていたんです。だから、特に師長にたくさん相談することもなく、自分がまずやってみてから「どうでしたか?」「どう思いますか?」と意見を聞く、そんな関わり方をしていました。
ただ、最近は少し自分の見方が変わってきました。「こんなとき、師長はどうしているのかな」という視点で見るようになったり、自分と師長との違いを意識するようになったりしてきたんです。自分が関わったときと、師長が関わったときで、スタッフの反応が全然違うことに気づいて、そこから学ばせてもらっていると感じています。
もちろん、師長と主任では立場も違うので、伝え方や関わり方は変わってくると思います。でも、やっぱり「聞き方」と「伝え方」でスタッフの行動が大きく変わるように思います。だからこそ、そうした点を共有しながら、もっと相談していったほうがいいのかなと最近思っています。
回復期病棟では、食事提供のタイミングの見直しを最初の改善課題として取り組み、患者一人ひとりに合わせたサービスが実現しました。これにより、患者満足度の向上と業務効率の改善が同時に達成されています。さらに、スタッフの自発的な改善提案と意識改革が進み、病棟全体が活性化しました。これにより、LEANを通じて現場主体の改革が進んでおり、患者ケアの質向上に直結しています。
【急性期病棟】全員参加型の問題解決アプローチ
急性期病棟では、PDCAサイクルの導入により、スタッフ間での意見交換が活発化し、問題解決に向けて積極的に取り組む文化が根付きました。特に、スタッフ全員が問題解決に主体的に関与するアプローチが病棟内で定着し、業務効率化と患者ケアの質向上に繋がっています。

急性期病棟でのLEAN導入による変化はどのようなものでしたか?
(真鍋師長)大きな変化という点では、「やり始めだから」ではなく、みんなで考えていくという雰囲気になってきたことが挙げられると思います。みんなの意見をもらいながら進めていく中で、特に主任さんがしっかり覚えていてくれて、私が一方的に言うのではなく、「今こういう流れになっているよね」と相談し合いながらスタッフに確認し、困ったことがあったときには一緒に対応する、そんな形になってきています。
(山崎主任)スタッフが変わったという実感は正直あまり分からないんですけど、私自身はここで教えてもらったことが常に頭をよぎるようになりました。「あ、今は火消し作業をしているんだな」とか、そういう意識です。
以前はスタッフから「こんなのどう?」と提案があったら、すぐに「ああ、いいね!やろう」と答えていたんですけど、今はまず問題点から考えて、順序立てて取り組むようにしています。PDCAサイクルみたいに、まずみんなに周知して、次にどうしようか、と進めていく形です。
それから、模造紙をよく貼るようになりました。私はそれを「アトリエ」って呼んでいるんですけど、そこに付箋を貼ってもらうんです。実際にはあまり貼ってもらえないことも多いんですが、貼るだけでもみんなの意識がそこに向くんですよね。なかなか意見は出てこないこともありますが、そうした取り組みは以前と変わったところだと思っています。
どのようにスタッフの意識改革が進みましたか?
(真鍋師長)聞き方についてなんですけど、あの『5つのKATA』ってあったじゃないですか、あれをやっぱり一人ひとりが意識して使うようになってきたと思います。面談のときでもいいし、スタッフと一対一で話をするときでも、『KATA』を見ながら「自分はいままでこういう聞き方をしてなかったな」と振り返りつつ問いかけていく。そういうことができるようになってきました。
私自身もそうですし、みんなもお互いにその『5つのKATA』を使うようになってきていて、一方的にこちらがしゃべるのではなく、相手の言葉をもっと引き出せるようにしないといけないんだな、という思いが強くなっています。
(山崎主任)私も『KATA』を前に出して話をするんです。スタッフにも見てもらいながら、「私が一方的にこうなってるんだよ」と伝えるだけじゃなく、「私もまだ未熟なんだよ」という感じで、一緒にこれを使って考えてみようか、といった形で活用しています。
それが頭から離れないのは、何でなんでしょうね。たとえば「あ、いま火消し作業をしてるな」と思ったときに、「そういえば火消し作業って言ってたな・・・これ、私いままさに火消し作業をしてるんだよな」と意識するんです。
急性期病棟では、PDCAサイクルの導入により、スタッフ全員が主体的に問題解決に関わる文化が根付き、業務の効率化と患者ケアの質向上が実現しました。特に、『5つのKATA』を使った問いかけがスタッフ間での意見交換を活性化させ、改善提案が積極的に行われるようになりました。この取り組みにより、スタッフの意識改革が進み、患者ケアの質向上にも繋がっています。今後も、全員参加型の問題解決アプローチが病棟全体に広がり、更なる改善が期待されます。
【外来】効率的な患者対応と情報収集の改善
外来では、患者情報の収集と申し送りの改善が業務効率と患者対応の質向上を実現しました。特に、患者さんやその家族としっかりとコミュニケーションを取り、必要な情報を迅速に収集する体制が整いました。

外来でのLEAN(リーダー開発研修)導入後、どのように改善が進んだのでしょうか?
(戸松師長)私たちは「申し送り」をテーマに取り組んできたんですけど、やっぱり申し送りってすごく難しいと思うんです。まず第一に大事なのは、患者さんの情報をどう伝えていくか。その情報をしっかり継続して受け取りながら、どれだけ時間を短縮できるかという点だと思います。
そこをリーダーである私たちが考えて取り組んでいるんですが、その結果、申し送りの時間はどんどん短縮されてきています。
(古賀主任)今回研修を受けさせてもらったことで、その後も継続してみんなが取り組んでくれています。もともとは情報収集力を高めたり待機時間を減らすことを目的にしていたんですが、今では入院に関係なく、どの患者さんに対しても、最初から患者さんやご家族にしっかり話を聞くようになりました。その結果、情報収集力が身についてきていると感じています。
研修を受けたことで、自分自身もより一層「現場をしっかり見よう」という意識に繋がりましたし、みんなの意見を聞きながら日々取り組んでいると思います。
申し送りの改善が業務効率にどのように影響を与えましたか?
(戸松師長)私は、もともとすぐに答えを出してしまうタイプだったんです。「こんなこと考えてるんです」と言われたら、「じゃあこうして、こうしてじゃない?」とつい言ってしまうような。
でも、今は「それは自分で考えてみてください」と伝えて、まずはスタッフに考えてもらうようにしています。そのうえで出てきた意見に対して、「それならこうしたほうがいいんじゃない?」とアドバイスする。そういう関わり方に変わってきているかなと思います。
(古賀主任)リーンの現場ラウンドでしたっけ?「どういうものの見方をすれば変わるのか、小さいことでもいいから気づくことが大事だよ」と教えていただいたので、それをチームリーダーさんにも共有しました。今では「ちょっとしたことでも気づいたら教えてほしい」と伝えるようにしています。
外来では、スタッフ連携と主体的な改善活動により、患者対応の質と業務効率が向上しています。外来部門では、申し送り改善と情報収集力の強化が大きな成果を生みました。戸松師長の工夫で時間短縮が進み、古賀主任の取り組みで情報収集が強化され、効率的かつ質の高い対応が実現しています。
【オペ室】時間管理の見直しと効率化の進展
オペ室では、手術のスケジュール管理を見直し、無駄な時間を排除することが目標となりました。特に、スタッフ間で改善提案が出やすくなり、徐々に業務の効率化が進んでいるという変化が見られます。オペ室における改善は急速ではありませんが、日々のスタッフの努力とトヨタ生産方式やA3の導入が、少しずつではありますが確かな成果を上げています。

LEAN(リーダー開発研修)導入後の変化と評価
(川崎師長)オペ室では僕しかできない仕事があると思うんですよね。人事のことやオペ場の方針など、管理者としての役割があります。LEANの研修を受けたことで、トヨタ生産方式などを参考に「文章を書く」ようになりました。文章にして言語化していくと、やはり答えは出てくるんです。だからこそ、ぜひみんなにもやってほしいと思います。
実際に書いてみると、『ああ、こんなこともあった』『そういえばこういう点もあった』と振り返ることができる。そうした積み重ねがとても大事だと感じています。この研修をきっかけにトヨタ生産方式の本を読んだりもしましたが、管理者としては「節約」というより「提案」をしていく立場です。そこでA3用紙を使った考え方は非常に勉強になりました。
今では「あるべき姿」をイメージし、それを実現するにはどうすればよいかを考え、だからこうですと書けるようになった。あの雛形を使えば大体の問題は完全には解決できなくても、必ず道筋は見えてきます。『あるべき姿はこうだ』『そのためには何が足りないのか』と順に回していけば解決に近づける。だからこそ、A3を1枚にまとめる方法は非常に有効で、さまざまな場面で活用できると実感しています。
スタッフ間の協力と意見交換の強化
辻巻主任 スタッフ自身が意見を出すことがまだ十分に定着していないのが現状です。ですから、考える機会をあえて作って定着化させていくことが重要だと考えています。日々少しずつでも続けていけば、必ず意見は出てくるはずです。
ただ、現場は常に時間が決まっていて、忙しい中で『出して出して』と求めても、みんな安全に業務を回すことで手一杯になってしまう。そのため、日常の中で何かあったときにこそ考えを出し合い、みんなで共有できるようにしたいと思っています。
現状ではそこまで持っていけていないので、今後の課題だと感じています。ですが、研修で学んだことを日々にどう取り入れるかを意識していけば、必ず前進できると考えています。
オペ室は制約が多く改善の余地は限られていますが、LEAN導入により川崎師長が提案力を強化し、スタッフも少しずつ意見を出す文化が芽生え始めました。即効性はないものの、改善意識が根付くことで、長期的な効率化と質向上が期待されます。
回復期病棟、急性期病棟、外来、オペ室の4つの部署におけるLEAN導入は、スタッフ一人ひとりの意識改革と業務効率化に大きな成果をもたらしました。特に、スタッフが自発的に改善活動に取り組む姿勢が浸透し、患者ケアの質向上にも繋がっています。今後も、PDCAサイクルを回し続け、他部署との連携強化を進めることで、病院全体の成長を支える基盤がさらに強化されることでしょう。
インタビュアー
株式会社日本経営 業務プロセス改善コンサルティング部 池上 瑞樹















